日経新聞ウェブ版の記事です。
https://t21.nikkei.co.jp/g3/p03/LATCB016.do?keyPdf=N202303250032588%5CNKM%5C6%5C6%5C001%5C%5C1492%5CY%5C%5C2023%2F0326%2FN202303250032588.pdf%5CPDF%5C20230326%5Cb2d59550&analysisPrevActionId=LATCB014
2023年度の公的年金額は3年ぶりに増額改定となり、67歳以下は前年度比2・2%増、68歳以上は同1・9%増となる。現行の年金制度で初めて年齢で改定率が変わる。少子高齢化に伴う給付抑制もフル発動される。これは「100年安心プラン」を銘打った04年改革で想定した調整がようやく実現することを意味する。
年金の1階部分にあたる基礎年金(国民年金)は4月分から67歳以下で満額6万6250円、68歳以上は同6万6050円となる。2段階ある年金額改定ルールを反映させた結果で、基礎年金の満額が2通りになるのは今の年金制度になった04年以来初めてのことだ。
第一の改定ルールは賃金や物価の変動を毎年度、年金額に反映させる仕組み。新たに年金を受け取り始める新規裁定者は賃金、すでに年金を受け取っている既裁定者は物価の変動率に連動させるのが原則となっている。23年度の年金額算定に使う賃金変動率は2・8%増、物価変動率は2・5%増となり、これによって年齢による改定率の差が生まれた。
年金は原則65歳から受給が始まるが、年金額改定では67歳以下を新規裁定者、68歳以上を既裁定者として扱う。これは新規裁定者の年金額算定に使う賃金変動率を2~4年度前の平均をもとに計算するため。65歳になる直前までの賃金変動を反映させるには、67歳までを対象にする必要がある。
既裁定者の年金を物価に連動させる原則には、年金改定を賃金の伸びよりも抑えることで年金財政を改善させる狙いがある。これまでの改定率で新規裁定者との差が生じなかったのは、物価と賃金が原則を適用できる状況になく、特例的な対応を続けたためだ。
バブル崩壊後の日本経済は長期停滞局面に入り、賃金の伸びが物価の伸びを下回るようになった。現役世代が納める年金保険料は賃金に連動するので、こうした状況下で物価連動の年金改定を行うと給付と負担の長期的な均衡が危うくなる。そこで04年改革では一定の場合に物価変動率を年金額に反映させない特例措置を導入した。物価の上昇率が賃金の上昇率を上回る場合には賃金連動とし、物価が上がっても賃金が下がった場合は改定率をゼロとした。
08年以降は賃金変動率がマイナスになるケースも頻発したため、21年度からは特例措置を一段と拡大させた。物価の変動率が賃金の変動率を上回る場合は、すべて賃金連動とする仕組みに切り替えたのだ。22年度の年金額改定ではこのルールが適用され、旧ルールなら物価連動で0・2%減にとどまるはずだった年金額は、賃金連動の0・4%減が適用された。
賃金の伸びが物価の伸びを下回るのは、デフレという異常事態が長引いた日本ならではの現象。通常の経済状態なら賃金が物価を上回る。想定外の事態への対応を強いられたのがこの20年間だった。
年金額改定の2段階目であるマクロ経済スライドも3年ぶりに発動される。少子高齢化の進展に合わせて給付を抑える仕組みで、現役人口の減少率と平均余命の伸びから算出した調整率を第1段階の改定率から差し引く。23年度の調整率は0・6%となり、最終的な改定率は67歳以下で2・2%、68歳以上で1・9%となった。
今回の改定で本来想定していた制度の姿がやっと出現するが、課題もある。マクロ経済スライドが0・6%という大幅調整になったのは、年金額がマイナスになる場合は発動しない名目下限ルールによって過去2年の繰り越し分がたまっていたのが原因。年金制度の持続性を高めるだけでなく、家計への影響が大きい年金水準の激変を避ける観点からも下限ルールの見直しが求められる。
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