2021.10.05|労務管理

70歳までの雇用確保措置

65歳超助成金が売れに売れています!もうすでに締め切られてしまいましたが…
その助成金を申請したほとんどの企業が定年を70歳まで引き上げたようです。少し心配なのは、仕事の内容と賃金のギャップが出てこないかということ。少し冷静に職場を見てみたほうが良いと思います。それとともにやはり言われているのは在職老齢年金をどうしていくのか?難しい問題だと思います。

年齢での一律雇用維持、限界 高齢者雇用どう進めるか  日経新聞ウェブ版より
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOCD173EE0X10C21A9000000/?unlock=1

2021年版「高齢社会白書」によれば、現在日本の人口の28.8%が65歳以上の高齢者だ。この比率は今後も上昇を続けることが見込まれ、25年には30%、団塊ジュニア世代(1971~74年生まれ)が65歳に到達する40年ごろには35%を超えると予測される。これに伴い、65歳以上の高齢者1人を支える生産年齢人口(15~64歳)の数は、現在の2人から1.5人以下にまで減ると予測される。

その一方で、高齢者、特に65~74歳の前期高齢者の就業意欲は高い。20年の65~69歳の労働力率は51.0%であり、非労働力の方が少数派だ。また高齢期に差し掛かった世代の就業継続意思も強い。例えば内閣府の19年度「高齢者の経済生活に関する調査」によれば、60代前半の男性の約6割、女性のほぼ半数が、少なくとも70歳まで、あるいは働けるうちはいつまでも仕事を続けたいと考えている。

生産年齢人口の減少とも相まって、労働力人口に占める高齢者の比率も上昇を続けている。図に示したように、64歳以下の労働力人口は90年代末をピークに減少傾向にある。10年代後半は主に女性の労働供給増により増加傾向にあるが、90年代後半から10年代半ばまでの約20年間はほぼ一貫して減少し続けてきた。

対照的に、65歳以上の高齢労働力人口は10年代に入り急拡大している。団塊の世代が65歳を超えて、高齢者人口を押し上げた効果も大きいが、高齢者の労働力率も10年の19.9%(65~69歳のみなら37.7%)から25.5%(同51.0%)へと大幅に上昇している。

高齢労働力人口が急拡大した結果、全年齢を合計した労働力人口は、90年代から10年代半ばにかけてほぼ横ばいで推移し、近年は増加に転じている。国全体でみても、生産年齢人口の減少を高齢労働力の活用で補った形になっており、今後の日本経済にとって高齢労働力の活用が果たす重要性を示唆している。

一方、これまで日本でとられてきた高齢者雇用促進政策は、定年退職年齢と年金の受給開始年齢のギャップを埋めようとする側面が強かった。厚生年金の受給開始が60歳だった90年代には、定年退職年齢の下限を60歳とすることで、厚生年金の受給開始年齢と定年退職年齢の差を解消できた。

だが00年代に入り、厚生年金の受給開始年齢の65歳までの段階的な引き上げが始まると、定年退職と年金受給の間の空白期間が再び問題となる。そこで06年4月の高年齢者雇用安定法の改正では、厚生年金を満額受給できる年齢までの「継続雇用」を企業に義務付けた。21年4月の改正で70歳までの就業機会の確保を企業の努力義務としたのも、年金受給開始年齢のさらなる引き上げを視野に入れたものだろう。

こうした背景からか、同法による高齢者雇用促進政策は基本的に「○歳までの雇用維持」を努力目標、努力義務、義務と徐々に強化していく形をとっている。しかし一定年齢まで雇用者全員の雇用を維持させようとする政策は、本来は企業が退職させていたであろう労働者の継続雇用を強制するという意味で、何らかのゆがみをもたらすはずだ。

~中略~

このように65歳までの雇用延長は比較的うまくいったが、70歳近くになると体力や認知能力のばらつきも大きくなる。本人が就業の継続を望んでいても、以前と同じようには働けない場合、どのような処遇が適切かという問題も出てくる。

この点を加味したのか、21年4月に新たに努力義務として導入された「70歳までの就業機会の確保」は、業務委託契約や社会貢献事業への従事など、直接雇用でない選択肢も加わった。自由度を高くすることで企業の負担は軽減されるが、雇用者に対する保護が適用されない働き方には労働条件の悪化が懸念される。かといって「就業機会の確保」の条件を厳しくしていけば、若年層へのしわ寄せが出てくる懸念がある。

年齢を区切って一律に雇用維持を要請する方法はそろそろ限界なのではないだろうか。それよりはまず、働く高齢者の年金を減らすことで労働供給を抑制する「在職老齢年金」や、定年前との差額を補うことで逆に再雇用者の給与水準を下げやすくしてしまう「高年齢雇用継続給付」など、高齢者の労働供給をゆがめる制度を見直すべきだ。こうした障害を取り除けば、若年人口の減少を補う形で自然と高齢者の就業率は向上していくのではないか。

年齢を区切って雇用維持する政策の副作用として、その年齢までは働き続けるべきだという規範が形成される点も無視できない。高齢でも働き続けなければ経済的に困窮するような状況はあってはならない。健康なうちに引退して悠々自適な生活を楽しみたい人もいるだろう。働かない自由も保障しつつ、意欲と能力がある高齢者の活用を妨げない制度設計が求められる。

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