2021.10.22|障害年金

障害者割引の記事

中日新聞に興味深い記事がありました。私も前々から、障害者割引をネットで予約できないか、電話で聞いたことがあります。(私は単にめんどくさいから!という理由で)丁重にお断りを受けました。
https://www.chunichi.co.jp/article/351839

新幹線ネット予約 障害者割 なぜ適用外

JR東海などが新幹線で紙の切符を減らし、インターネット予約システムへの切り替えを進めている。このシステムを利用すれば一定程度料金が安くなる一方、より安価になる障害者割引は適用されない。割引を受けるには、みどりの窓口まで行かなければならない。そんな不便な仕組みに当事者から不満の声が上がっている。 (宮畑譲)

「ネットを使ったノーマライゼーションの見本になりうるのに、逆に差別の見本になっている。時代に逆行したシステムだ」そう語るのは、名古屋市内に住む歯科医師の男性(48)。脳血管の障害で両手指、両足に障害が残り、身体障害者第二種三級に認定された。
男性が怒りを向けるのは、JR東海がJR西日本と提供するネット予約システム。年会費無料の「スマートEX」、同千百円で割引率の高い「エクスプレス予約」の二種類がある。東海道新幹線と山陽新幹線が対象で、ネット予約すれば交通系ICカードなどで改札を通ることができる。八月末時点の登録者は約八百三十二万人に上る。
大きな特徴の一つが、割引を受けられること。東京-名古屋間の「のぞみ」の指定席は通常、乗車券と特急券を合わせて一万一千三百円なのに対し、ネット予約システムを使えば一万三百十~一万一千百円となる。

障害者の場合、これらとは別に割引される仕組みがある。JR東海では身体障害者が一人で乗車する場合、百キロ超で乗車券を五割引きにする。そのため、東京-名古屋間で「のぞみ」の指定席に乗る場合、八千円余りで済む。
先の男性が憤るのは、こうした障害者割引がネット予約システムに適用されていないからだ。毎回、みどりの窓口で障害者手帳を提示したうえ、紙の切符を購入しなくてはならない。
男性は介助がなくても歩けるが、足が不自由になり出歩くのは以前より負担に感じるようになった。みどりの窓口までわざわざ行くのはつらい。乗車日より前に切符を買おうとすると、なおのこと大変だ。みどりの窓口のある最寄り駅まで行くには、自宅からバスで往復一時間半かかる。
「ネット予約を使えれば、どれだけ楽になるか。それに窓口で自分の最もつらい過去を毎回伝えなくてよくなる。会員登録する際に障害者情報を入力すれば、解決する話なのに」
男性はJR東海に何度も改善を求めているが、いつも回答は同じ。「ご要望いただいたサービスの実施は予定しておりません」。しびれを切らした男性は六月、株主の一人として書面で問いただしたが、JR東海は「障害者手帳の内容や乗車距離、介護者の有無により割引適用条件が異なる」などとして、実施予定はないと答えた。
高速で移動できる新幹線は便利だが、障害者にとって使いにくい存在になっていないか=8月、JR名古屋駅で
高速で移動できる新幹線は便利だが、障害者にとって使いにくい存在になっていないか=8月、JR名古屋駅で

本紙があらためてJR東海に取材すると、「現時点では導入する予定はないが、課題として認識しており、検討を進めている」との回答だった。
やはり納得いかないのが、先の男性だ。
そもそもJR東海はネット予約の利用が広まっていることもあり「紙の切符離れ」を進めようとしており、東海道新幹線の指定席の回数券販売を来年三月に終了させる。男性は「JR自身が紙の切符はすでに時代遅れと示しているのに、ネット予約システムに障害者割引を適用しないのは障害者排除だ」と語る。
JR東日本も新幹線のネット予約システムがあるが、身体障害者への対応はほぼ同じだ。

一方、大手航空会社はネット予約で身体障害者の割引を実施している。会員として情報を登録すれば、基本的には空港で障害者手帳を提示しなくても飛行機に乗ることができる。
日本航空(JAL)では、障害者手帳のコピーなどを送付した上で、障害者と登録した会員カードをつくれば、全ての国内線で障害者割引が適用された運賃でネット予約できる。運賃割引は最大で48%。会員登録しない場合でも、ネットで予約、割引適用は受けられる。その場合は有人のカウンターで手帳を提示する必要がある。全日空(ANA)でも同様の運用が行われている。
先の男性はこうした航空会社の対応を引き合いに「JRが実施できない理由が分からない。新幹線は利用者が多いからかもしれないが、面倒くさがっているとしか思えない」と憤る。
障害者団体でつくるDPI日本会議も以前から改善を申し入れており、佐藤聡事務局長も「JRはなりすましを恐れているのかもしれないが、手帳を登録すれば済む話だ。システム、仕組みを作ればよいだけのはずで、なぜできないのか不思議だ」と話す。
二〇一六年施行の障害者差別解消法では、行政や事業者に不当な差別的取り扱いを禁じ、合理的配慮を求めている。三年以内に施行される改正法では、企業にも合理的配慮の提供を義務化する。
合理的配慮とは、事業者側などに過度な負担がない限り、障害者に対する障壁をなくすことを指す。ただ、東洋大の元教授で自身も車いすで生活する川内美彦さん(68)は「テクノロジーは進化していて、改良しようと思えばできるはずだ。なりすましへの対応は車掌が確認すればいい話だ」と断じ、JR側に過度な負担は生じないと考える。そして、「障害者がほかの人以上に努力しないと切符を取れないわけで不当な差別的取り扱いに当たる」と指摘する。
加えて、こう現状を嘆く。「情報技術は全ての人を同じスタートラインに立たせることができる有力な道具だというのは明白。ネットで予約して、タッチするだけで改札を通れる。そういう世界が目の前にあるのに。今まで以上に取り残された感じがある」
国もICカードなどを使い、障害者の移動の利便性向上、割引の簡素化を各公共交通機関に通知を出して求めている。国土交通省バリアフリー政策課の担当者は「(JR東海のシステムが)合理的配慮に欠けるかは直ちに判断できないが、オンライン予約が普及する中で、障害者が取り残されることのないように対応してもらいたい。引き続き要請していく」と話す。
こうしたJR東海の対応の根本に「一九八七年の国鉄民営化に問題がある」とみるのは、評論家の佐高信さんだ。「障害者への配慮は社会の進歩とともに生まれてきた。しかしJR東海は、そもそも社会とは、公共輸送はどうあるべきかを分かっていないから、障害者への対応も遅れてしまう」と批判し、こう続ける。「民営化によって、公共交通機関なのにもうけ第一という考え方になった。本来、公共輸送は利用者全般の利便性を考えたものでなくてはいけない」

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