2023.08.04|障害年金

精神障害の労災認定基準見直しへ

精神障害の労災認定基準の見直しに向けて審議を続けてきた厚生労働省の専門検討会(精神障害の労災認定の基準に関する専門検討会)が6月20日、報告書を大筋で取りまとめた。近日中に公表される。

業務による心理的負荷を原因とする精神障害については、近年右肩上がりで増えており、令和3年の労災請求件数は2,346件と過去最多を更新。今後も増加が見込まれるなか、専門検討会は精神障害事案の審査をより迅速かつ適切に行えるよう、最新の医学的知見や裁判例等を踏まえ見直しを検討した。同省は報告書をもとに、パブリックコメントを経た上で、精神障害の認定基準を定めた労働基準局長通達を見直す考え。

業務による心理的負荷評価表を大幅に改正
主に見直されるのは、業務による出来事に応じて心理的負荷の強度(「強」「中」「弱」)を評価するために参照する「業務による心理的負荷評価表」(下表参照)だ。発病前のおおむね6ヵ月の間に起きた業務による出来事について、心理的負荷が「強」と判断されれば認定要件の1つを満たす。

新たな「業務による心理的負荷評価表」では、新項目として①感染症等の病気や事故の危険性が高い業務に従事したこと、②顧客や取引先、施設利用者等から著しい迷惑行為を受けたこと(いわゆるカスタマーハラスメント)を追加。一方で、類似性の高い項目や「強」と判断されることがまれな項目は統合し、全体の項目数を整理した。
さらに近年の決定事例や裁判例等を踏まえ、総合評価の視点や具体例を拡充。特に具体例は「強」「中」「弱」の強度ごとに明示し、包括的な記載が多かった現行の評価表よりも詳細かつ明確にした。

感染リスクや顧客等の迷惑行為の評価を明確化
新たな心理的負荷評価表では、2つの具体的出来事が追加された。1つは新型コロナウイルス感染症を念頭に、感染リスクを負いながら業務に従事する心理的負荷を踏まえた「感染症等の病気や事故の危険性が高い業務に従事した」というものである。
もう1つは、近年パワーハラスメントなどとともに社会問題とされる「顧客や取引先、施設利用者等から著しい迷惑行為を受けた」カスタマーハラスメントを新たな具体的出来事に追加した。

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